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持ち上げない 抱えない スライディングボードによる座位移乗
持ち上げない 抱えない スライディングボードによる座位移乗
渡辺裕美(東洋大学 教授)・小野内智子(東洋大学 助教実習担当)・田口潤(東洋大学 助教実習担当)
パート1 持ち上げない 抱えない介護技術を練習する前に知っておきたい基本知識
1.3つの移乗方法
(河添竜志郎・窪田静「第2章 基本動作に強くなろう」是枝祥子・渡辺裕美編著『ソーシャルワーカーのための介護』有斐閣、pp57-62、2002.より引用、要約)
2.移乗方法の適応 どの人にどの移乗方法が適しているかを見極める
- 立位移乗の適応:自分で回転したり座ったりできるくらいの人。
- 座位移乗の適応:座位を保てる人。前傾姿勢になれる人。(褥そうリスクがある人は注意)
- リフト移乗の適応:座位をとれない人、座ると頭や身体がすぐに倒れる人 ベッドで生活の人
今やっている移乗方法を見直しましょう
★介護現場では、立てないほどの重介護の人をも、介護職が抱きかかえています。
★座位移乗は普及していません。スキルを持った介護職は少なく、道具も不十分です。
★特に、中足移乗はすぐにやめましょう。(利用者の両足の間に介護職の片足を差し入れて、利用者の全体重を介護職が抱きかかえたまま、介護職の腰をひねって、ベッドから車いすへ移乗させる中足移乗は、①危険です。②介護職の腰痛の原因になります。③いっしょに転倒すると大けが。④介護者が差し入れた中足が、利用者が自分の足で立って回転しようとする動きを妨げ、自立支援になりません。⑤狭いフットレストの間に3本の脚が入って回転するので、皮膚損傷)
★座位能力をどうやってみるか、皮膚をどうみるかは、総会時研修会で専門家の研修予定
★介護教育で人材を育てることが必須です。
★教科書内容も加筆修正が必要です。
3.介護保険制度とスライディングボード
平成15年4月から、介護保険でレンタルされる福祉用具にスライディングボード・スライディングマットが追加となりました。厚生労働大臣が定める福祉用具貸与に関わる福祉用具の12種目の1つ「特殊寝台付属品」に「スライディングボード・スライディングマット」が追加されました。(老振発第0224001号 平成15年2月24日 「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取り扱いについて」)
特殊寝台付属品
- サイドレール(電動ベッドの側面にとりつけ、利用者の落下防止。)
- マットレス
- ベッド用手すり(電動ベッドの側面にとりつけ、立ち上がり、移乗等を助けます。)
- 電動ベッド用テーブル
- スライディングボード・スライディングマット
- 介助用ベルト
|
2018(平成30)年の介護保険法改正のポイント
軽度者
(要支援1・2、要介護1)の方は、車いす(付属品含む)、
特殊寝台(付属品含む)、床ずれ防止用具、体位変換器、認知症老人徘徊感知器、移動用リフトの利用を
認められていません。
しかし、
一定の条件に該当する方は例外的に利用が認められます。
福祉用具のレンタル価格を適正化
介護保険法では、福祉用具のレンタル価格は、レンタル事業者が自由に決めてよいとされ、同じ福祉用具でも、レンタルする事業者によって価格が異なっていました。高額な料金設定をする事業者もあり、問題となっていました。そこで、①商品ごとの全国平均の貸与価格を公表 ②商品ごとの貸与価格の上限を設定 ③事業所は機能・価格の異なる複数商品の提示を義務付け、3つの対応が取られることになりました。
福祉用具については、
2018(平成30)年10月から貸与価格の上限設定。
商品ごとの全国平均貸与価格及び貸与価格の上限を公表。以下 厚生労働省WEBより一部抜粋
例
法人名 |
商品名 |
型番 |
全国平均貸与価格(円) |
貸与価格上限(円) |
株式会社ロメディック・ジャパン |
イージーグライドL |
5050 |
1,268 |
1,620 |
株式会社ロメディック・ジャパン |
イージーグライドM |
5020 |
1,213 |
1,570 |
株式会社モリトー |
移座えもんシート |
|
734 |
1,050 |
株式会社モリトー |
移座えもんシートML |
|
765 |
1,240 |
※mhlw.go.jp
パート2 体験
車いすをどこにおくと移乗しやすいか体験しながらベストな位置を探しましょう。
あなたはベッドに端座位で座っています。
車椅子に移乗してください。
一歩も踏み出さない 歩ない 足の回転だけで車いすに移乗してください。
車いすはどこに位置づけたらよいですか? 角度は? 片麻痺だったら?
スライディングボードにさわりましょう。
ボードの表と裏を確認
折り目をつける
しなり状況を見る
スライディングボードを使って、
自分自身で、スライディングボードを使って、座位移乗をやってみましょう。
スライディングボードによる座位移乗を行うために必要な福祉用具を知りましょう。
①高さ調整(ハイ・ロー)機能があるベッド
②アームレストとフットレストのはずれる 車いす
③スライディングボード
パート3 ビデオ視聴
パート4 デモンストレーション と ポイント解説
1. 車椅子の準備
移乗側アームレストをはずす
フットレストは両側はずす
車いすは、ブレーキをかけて少し離したところに置く
2. 説明と同意
これから行う介護行為について、利用者へ説明する
車椅子へ移りましょう。よろしいですか?できないことはお手伝いいたします。できることはご自分でなさっていただけますか?」と声をかける。
それぞれの行為ごとに、声をかける
3. ベッド端坐位
利用者をベッドサイドに端坐位に座れるように介助する。
足を床につけ、手はマットレス。安定した座位を確認する
4. ベッドの高さ調節
ベッドの高さを調整する。車いす座面より少し高めに。
視線は絶対に離さない(利用者の肩に介護職の手をおくと姿勢保持を手でも確認できる)
5. 介護職の立ち位置
介護職は利用者の真正面に立って、利用者の両肩に手を添える
6. スライディングボードの敷き込み
利用者の両肩を前に引き、利用者を前傾 にする
利用者を斜めに倒すー(片側の臀部が浮く)
介護職の片手を利用者の脇下に入れて体を支えつつ、
介護職のもう一つの手は、ボード端を、上から、持つ
浮いた利用者の片側の臀部下にスライディングボードが乗るように敷き込む。
(マットレスにボードを押し付けるように、上から敷き込む)
安定した座位姿勢にもどす
7. 車いすの引き寄せ
車いすをベッドのさらに引き寄せ近づける
車いすにブレーキがかかっていることを確認する
8. ボードの回転
ボードの片側を回転させ、車いす座面にしっかり橋渡しする
対角線上 橋渡し距離10センチ以上が安全
9. 利用者の手をアームレストに誘導
利用者の片手を車いすのアームレストにかけてもらう
10. 利用者の足位置
利用者の足位置を動かす。車いすの法へ引き寄せる。
11. 介護職の足位置
介護職の足は90度に開く
片足は利用者の足と並ぶように置き、もう一方の足のつま先は車いす方向へ向ける
12. 介護職の手位置と支え方
介護職は片手を利用者の脇下に入れ、
介護職のもう一つの手は、利用者の腰に置く
13. すべらせて移乗
利用者の体を移乗側に斜め前に
介護職は利用者の脇下に手を入れて体を支えながら、腰においた手を押すイメージ
利用者の体重がボードに乗ってゆっくりすべる。く
移乗終わりは、滑った方向と逆にキュっと体を傾け腰を押すと奥まで座れる
14. ボードを抜く
ボードを上に引き上げるようにして抜く
ボード裏には滑り止めがついている。真上にあげ接触を減らすと楽に抜去
15. 奥にしっかり座る誘導
奥にしっかりとすわってもらうように声をかける
16. アームレスト
アームレストをつける
17. 摩擦をとる、ずれをはがす
本人がプッシュアップするか
前後左右に体を倒して、滑ったときに生じる、皮膚のずれや摩擦をとる
18. フットレス
フットレストを車いすにつける
フットレストに足を乗せる
19. 丁寧な流れ
動作の一つ一つが丁寧で中断せずにスムーズな流れであったか
20. 安全・安心感
目配り、安全確認があること。ヒヤリハットの場面がないこと
パート5 スライディングボードによる座位移乗 介護技術チエックリストを使っての練習
パート6 練習成果を確認
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