Lesson 26
福祉用具や補装具給付に関する制度をよく知る


 介護現場でシーティングを必要とする人はとても多いのですが、施設にある車いす、施設にあるクッション、でなんとか対応しようとするととても困難です。研究をすすめてきて、今、施設居住者も福祉用具を介護保険でレンタルできるように制度改正が必要、と大きな声で言いたいのです。
 在宅の場合は介護保険で車いすもクッションも1割の費用でレンタルできます。平成15年4月から、介護保険給付対象となる福祉用具にスライディングボード・スライディングマットが追加となりました。しかし、施設は別です。施設は車いすを備品でそろえることになります。施設入居者が補装具給付として車いすを申請する道もあるが、なかなか制度が開かれない現状があります。
 車いすはその人に合わせてはじめて使えるようになります。木之瀬隆は「皆さんは隣の人の靴をはけますか?車いすは靴といっしょです」と言っているように、誰にでも使えるような車いすは、誰にも合わないのです。施設でも介護保険給付で福祉用具をレンタルでき、その人に合わせた、その人の車いすやクッションを使えるように、ぜひ、制度改革を望むものです。

Q1.福祉用具に関する介護保険と身体障害者福祉法との関係は?
40歳から64歳までの特定疾患の人、および、65歳以上の人は、介護保険が優先します。したがって、まず、介護認定を受けることになります。ただし、明らかに既製品で対応できない場合を除きます。

Q2.介護保険制度で、在宅の人が住生活環境を整えるのにどんなサービスがあるの?
@ 住宅改修費、A福祉用具貸与(レンタル)、B福祉用具購入、のサービスがあります。

@ 住宅改修
住宅改修の費用は20万円までです。要介護度に応じた支給限度額とは別枠で、20万円を上限に、原則として1回だけ受けられます。自己負担額は講じにかかった費用の1割です。例えば、20万円の工事を行った場合いったん費用を全額支払い、あとで9割の18万円が介護保険から払い戻されます。利用者の自己負担は1割の2万円となります。
住宅改修費の対象となる具体的な住宅改修の範囲は、手すりの取り付け、床段差の解消、すべりの防止および移動の円滑化等のための床材の変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替え、その他、これらに付帯して必要となる住宅改修とされています。

A 福祉用具のレンタル

利用者は要介護度に応じた支給限度額の範囲以内で、車いすなどを含む福祉用具を組み合わせてレンタルできます。レンタル料金の一割が自己負担となります。クライニングが可能な座椅子保持機能つきモジュラー車いすもレンタルできます。例えば、買取価格166000円のモジュラー車いすの一ヶ月レンタル料金は9000円です。利用料として本人負担は900円となります。一ヶ月1000円未満で体にあった車いすをレンタルすることが出来ます。
介護保険でレンタルできる対象種目は12品目です。具体的には、車いす、車いす付属品、特殊寝台、特殊寝台付属品、褥そう予防用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助杖、痴呆性老人徘徊感知器、移動用リフト(つり具の部分を除く)です。平成15年4月から、特殊寝台付属品の中に、スライディングボード・スライディングマットが追加されました。

B 福祉用具の購入
 他人が使ったものには抵抗があるレンタルに適さないと思われる入浴・排泄用品については、要介護度に応じた支給限度額とは別枠で、年間(毎年4月1日からの1年間の期間)10万円が上限として購入費が支給されます。例えば5万円のポータブルトイレを購入したとき、いったん全額支払い、あとで9割、45000円が介護保険から払い戻されます。本人負担は1割、5000円です。
 介護保険の福祉用具購入の対象種目は5品目です。具体的には、腰掛便座、特殊尿器、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分、です。

Q3.からだに合った車いすを手に入れるにはどうすればいいのか?
在宅の人の場合、介護保険で車いすをレンタルできます。介護保険でレンタルできるのは自走用標準型車いす、普通型電動用車いす、介助用標準型車いすです。さらに、車いす付属品として、クッション、背もたれパッド、テーブル、ブレーキ、電動補助装置(ユニット)がレンタルの対象となっています。利用者は支給限度額の範囲以内で車いすなどを含む福祉用具を組み合わせてレンタルできます。レンタル料金の一割が自己負担となります。

Q4.標準型車いすとは決まったサイズでしょうか?
いいえ、介護保険で体型や症状にあわせてさまざまな部分の調節の出来る、モジュラー型車いすもレンタルできます。座面と背面の角度が一定のまま車いす全体が傾く、ティルト、リクライニングが可能な座椅子保持機能つきモジュラー車いすもレンタルできます。例えば、買取価格166000円のモジュラー車いすの一ヶ月レンタル料金は9000円です。利用料として本人負担は900円となります。一ヶ月1000円未満で体にあった車いすを借りること出来ます。

Q5.介護保険レンタル以外に車いすを手に入れるにはどうすればいいのか?
介護保険の対象となる福祉用具のうち、車いす、歩行器、歩行補助杖については身体障害者福祉法でも補装具として手に入れることができます。これはレンタルではなくご本人のものになります。

Q6.どんな人が補装具として手に入れられるのでしょうか?
身体障害者手帳を持っている方が対象となります。そして、介護保険のレンタルではうまく座れない人や生涯の状況により個別に製作することが必要と判断された場合(身体障害者更正相談所の判定)は身体障害者福祉法の補装具として車いすを手に入れることが出来ます。

Q7.特別養護老人ホームで暮らしている人も介護保険で車いすをレンタルできるのか?
いいえ、車いすのレンタルは在宅の人のサービスです。特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型医療施設の介護保険施設に入所されている方は施設の備品対応となります。

Q8.特別養護老人ホームで暮らしている方が車いすを手に入れますか?
はい、身体障害者手帳を持っている人であって身体障害者更生相談所等の判定で必要があると判断された場合には車いすなどが補装具として給付されます。

Q9.補装具って何?
補装具は、身体の欠損や機能障害による能力低下をほかの方法で代行しようとするもので、その手段をなるものである。従って、補装具は、身体機能の損傷を補い、日常生活 または職業生活を容易にするため必要なものであり、障害者の能力を最大限まで向上させる重要な手段で、社会復帰・社会参加を大きく左右する。

Q10.補装具の種類?
補装具は、身体障害者福祉法第20条第一項の規定により厚生労働大臣が定めるもの。
肢体不自由−義肢(義手・義足)、装具、座位保持装置、車いす、電動車いす、歩行器、収尿器、歩行補助杖、頭部保護帽
内部障害−ストマ用装具、必要に応じ車いす、電動車いす等についても対象となる場合がある。
視覚障害−盲人安全杖、義眼、眼鏡、点字器
聴覚障害−補聴器(箱型、耳掛型、挿耳型、骨導型)
音声機能障害−人口喉頭(笛式、電動式)
平衡機能障害−必要に応じて、車いす、歩行器等についても対象となる場合がある。

Q11.特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型医療施設の介護保険施設に入所されて いる人が、身体障害者の補装具給付で車いすを手に入れられますか?
はい。ただし、身体障害者手帳を持っている方が対象です。特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型医療施設の介護保険施設に入所されている方で、脊柱、下肢関節の拘縮、変形、短縮や身長・体重が大きすぎたり、小さすぎたりなどで既製品対応ができない場合については、身体障害者福祉法による補装具給付制度で車いすを手に入れることが出来ます。そのためには手続きが必要です。身体障害者更生相談所の判定により必要であると判断された場合に限り、車いすなどが補装具給付制度で入手できます。それ以外の場合は、特別養護老人ホーム等の施設で対応することになります。

Q12.身体障害者の補装具給付の手続きを教えてください。
補装具交付の手続きについて図を参照してください。概略を説明します。申請窓口は市町村です。身体障害者福祉課へ行って補装具の申請の用紙をもらいます。 @申請書 A医師の意見書 B業者の役所(福祉事務所)提出用の見積もり書を添えて提出します。または、業者の見積り書についてですが、役所(福祉事務所)より依頼があって、業者さんより福祉事務所に直接送付する場合もあります。市町村は更生相談所に対して「調査書」と「判定依頼書」を作成して添付して判定依頼をします。

Q13.医学的意見書は誰でも書けるのか?
いいえ、身体障害者福祉法第15条指定医、及び義肢装具等適合判定医師研修会修了者の医師が書きます。

Q14.医学的意見書をもらうにはどこに行けばいいの?
用紙については、市町村の窓口に行って受け取ります。そこで通院されている病院、担当医師、義肢装具等適合判定医師研修会修了者の医師に補装具給付に伴う医学的意見書を書けるか確認を取ってもらいます。
東京都の場合は、市役所の福祉事務所に問合せの上、判定依頼を申し込みます。 判定は基本的には、更生相談所で行います。
身体障害者更生相談所は、東京都身体障害者福祉センターの中にあります。
    東京都心身障害者福祉センター
    【TEL】 03(3203)6141
    【FAX】03(3203)6185
    東京都心身障害者福祉センター 多摩支部
    【住所】〒186-0003 東京都国立市富士見台2―1−1
    【TEL】 042(573)3311
    【FAX】042(576)5295

Q15.医学的意見書にはどのようなことが書かれるのか? 
例を示します。
肢体不自由の場合、氏名、住所、生年月日の他、障害名原因疾病、発症年月日、参考とする経過、現在の症状、補装具の名称、具体的処方、効果です。
医学的意見書の記入例1「両股関節、膝関節、足関節ともに中度以上の筋力低下を認める。左、膝関節から足関節は強度の拘縮があり、立位が自力では不能である。上肢の筋力は車いすの操作は可能である。リハビリ観点において自力移動を促進させるため自走式車いすが望ましい。また、左足の強度の拘縮により、足台はエレベーティグ(角度可変式)のものがよい。本人が下肢の筋力低下に加えて易疲労性のため、腰が十分に上げられない為、アームレストは跳ね上げ式にて対応がよく、長時間車いすを使用するためずれ落ち防止に加え褥そう防止のクッションとシートベルトが必要である。家族の車での移動もあるため、折りたたみ式、軽量のものがよい。(名称、処方が必要な補装具名、付属品名等を簡潔に記載します。)」

Q16.補装具の価格は定まっているの?
はい。補装具の価格(業者が市町村に対して請求することができる額)は、「補装具の種目、受託報酬の額等に関する基準」の別表に定める主材料、工作法または基本構造、付属品等によった場合の上限額が定められています。←これは市場価格等を勘案し厚生労働省が随時変更します。
詳細な額面は下記書籍をごらんください。
財団法人テクノエイド協会「補装具の種目、受託応酬の額等に関する基準 義肢・装具等取り扱い要領」平成14年度8月発行、3000円。(この本は本屋には売っていません。テクノエイド協会に問い合わせて直接入手してください。)

Q17.補装具給付を使うと無料で車いすが手に入るの?
いいえ、本人負担のお金がそれなりにかかります。
オーダーメイド車いすの給付額は平成14年4月現在102000円。
102000円は上限であり、{自分、家族}の両方の収入によって、本人負担の料金が変わります。
Ex 東大和市の場合は車いすをつくった時、自己負担分を市が助成するので本人負担はないそうです。それぞれの市町村の制度を調べてみましょう。
(オーダーメイドによる製品およびモジュラー車いすによる製品(モジュールを組み立てることにより製作でき、完成後の調整機能の有するもの)に適応するものとし、レディメイドによる製品については、価格欄の額の75%の範囲内とすること。)

Q18.付属品をつけることによって交付基準額は上乗せされる?
はい。本体車いすに付属品で付属機能をつけると、上乗せされます。
しかし、付属品については医師の処方によって、必要とみなされる場合とそうでない場合がありますので、医師の診断で機能の向上や安全性として必要な備品のみ付属品として付ける事が可能です。
例えば、
普通型車いす+{付属品―背もたれ、肘掛け、足台又はノブについて付属品欄に掲げる物を調整する場合は価格欄の10%の範囲内で必要な額。}+{シートベルト、テーブルまたはスポークカバーを必要とする場合は、修理基準の表に掲げる交換の額の範囲内で必要な額}+{また褥創等の障害のある者がクッションを必要とする場合は、修理基準の表に掲げるクッション等の額の範囲内で必要な額を加算(例えば、空気室構造クッションの場合43000円)最大交付基準額は178,911円となります。

Q19.老人施設等入所中の場合、補装具給付での車いす入手はなかなか難しいと聞きますが可能性はありますか?
はい。医師の意見書が重要となります。その方の障害状況などからどうゆう車いすが必要か、その車いすを使うことによってどうゆう効果・日常生活の向上があるかを明記することが必要です。