Lesson 25
介護職が行うシーティング支援のために誰が何をすればよいか


1) 介護職
 介護職が行うことは、まずは予防です。そして、シーティング援助を必要とする人に注目しましょう。どこでどのようにすごすのか、生活時間リズムをつくってそれぞれの生活の場で展開できるようにすること。座らせっぱなしでなく、ベッド、車いす、食堂の椅子、リクライニングの椅子、というように場を変える移乗をこまめに行うこと。クッションを使うこと。フットレストを調整すること、アームレストの高さを調整すること。それでも姿勢が保持できない人に対しては、理学療法士や作業療法士につなぎましょう。

2) 理学療法士や作業療法士
 なぜこの人がうまく座れないのか、原因をさぐれば、解決の糸口が見えてきます。座位能力や身体機能評価、股関節の開く角度、脊柱の変形など、をしっかりと把握し、どんな機能をもった車いすが必要なのか、フィッティングするには専門的な知識と技術をもった理学療法士や作業療法士でしょう。また、新しい車いすを本人が使いこなせるように、新しい車いすを使って、より自立した移乗方法を訓練したり、介護職に指導教育することも期待されることです。さらには、その施設やその施設のある地域のシーティング専門員のような存在として、身近にシーティングの知識を持つ理学療法士や作業療法士がいてくれればと切望します。

3) シーティングのプロ
 介護職も、理学療法士も、家族も、指導員も、さまざまな人がシーティングのプロの助言を求めています。シーティングシステム研究会のような継続研修を終えた人がもっと増え、必要な人が必要な助言を得られるシステムが必要です。インターネット上にシーティングを支援するサイトができることも一つであるが、なにせ、シーティングは生身の人を生活の場で観察し、福祉用具を試してみなければ、何がよいのかが見えてこないところがあります。仮想現実の中では事例の状況が伝わりにくく的確な助言を得にくでしょうから、願わくは、やはり、北欧のようにテクニカルエイドセンターのような機能をもつ拠点施設が地域にあり、シーティングの助言だけでなく、実際にその人の体と生活環境に合わせた、道具の選択とフィッティングが行われる必要性を感じます。

4) 福祉用具メーカー   
  介護職のためのシーティング研究の経過において、「車いすは趣味」というほど、とても熱心なメーカー担当者と出会いました。この熱意と気軽に何回も出向いてくれる腰の軽さによって、シーティングがうまくいったのです。シーティング援助を要するような人は、車いすを搬入後の微調整も要します。また、モジュラー車いすは、ただ届くだけでは普通型車いすと同じです。福祉用具メーカーの中にはモジュラー車いすの存在すら知らない人がいるという。福祉用具メーカーが幅広い商品知識を持ち、理学療法士や作業療法士と組んで、機能と使用目的にあわせた福祉用具を提供できるようなしくみが必要です。 フィッティングや微調整はお金にならないサービスとして今メーカーの好意によって行われています。調整やメンテナンスを商品として、費用をとってでも、きちんと継続して組織的に、誰もがそのサービスを利用できるしくみも必要なのではないかと考えるところです。