Lesson 22
座位移乗の必要性


 河添らは座位移乗を「一度しっかりした立位をとらない移乗」と定義しています。介護現場では、立てないほどの重介護の人をも、介護職が力で抱えて立位移乗させ、連続してつぎつぎと移乗介助を繰り返している現状があります。その労務負担から腰痛を抱える介護職も多いのです。なんとかしたいと皆が願っているのに、座位移乗ということばも方法もしらず、介護福祉士の教科書にも座位移乗はまだなじみがありません。リフト移乗もほとんど行われていないのです。
 長時間車いすに座らせっぱなしの介護が行われていることの背景には、別の側面として、移乗の問題があります。移乗の負担が重いので、一度座らせたら、そのままになっているのです。「シーティング」と「移乗」は表裏一体です。よりよく座らせるということは、車いすへ座らせっぱなしではなくて、静かにお茶を楽しむときは居室の椅子へ、おしゃべりをする時はソファーへ、くつろぎのひとときはヘッドレストがついたリクライニングチェアへ、昼寝はベッドへ、というように適切な場所へ移ることと=移乗介助を行うことになります。そうゆう場を移していく介護を行うためには、移乗をもっと楽に安全にできる方法が普及する必要があります。