Lesson 17
よく使われる車いす、リクライニング車いすの問題点


 さて、シーティング援助をしようとしても、今、多く使われている車いすにはいろいろと問題点があり、壁となっています。そのことについて述べていきます。引用した「」部分は、木之瀬隆「身体拘束をしない椅子・車いすの使い方」月刊総合ケア Vol.12,No.5,pp23-30,2002より引用抜粋しました。

@ 標準型車いすは、誰にでも合いそうで、実は誰にもサイズが合わない。車いすは使う人のサイズに調整する必要があるのに、それができない。
「車いすのおおくはいわゆるJIS規格大型が使われており、問題点として高齢者の体系との不適合がある。車いすの寸法は座幅×奥行きが約400o×400以上であり、高齢者の身体寸法から考えると座幅、奥行きは適合していない。寸法の不適合は座幅、奥行きが合わないだけでも車いす座位駆動をはじめとするすべての動作を阻害する。」

A(高齢者介護の現場では、使わないときにじゃまにならず、軽いということから、折りたためる布張り(シート張り)のスリングシート車いすが使われている。スリングシート車いすは、椅子ではない。折りたためるということは、座面がしっかりしていない、硬くないということである。これでは姿勢を保持できないから、身体は滑っていく。また、布は使っていると伸びる。体重が布の一部にかかり分散できない。
「スリングシートの車いすは折りたたみ機能が優先されるために、新しい車いすでも座面と背もたれの支持性が低く、スリングシートの沈み込みやその姿勢から走行や移動に伴い、骨盤が後傾した"すべり座り"(ずっこけ座り)は簡単に発生する。」

Bスリングシートに座り続けることによって、骨が変形する。
「骨盤が回線した"斜めすわり"は、非対称な筋緊張や筋力の弱化からも発生するが、不安定なスリングシートに助長される。シートの中央に座らなければ、斜め座りは簡単に起こる。そして、骨盤の回旋と傾斜により脊柱の代償として側わんが生じる」

C リクライニング車いすは、リクライニングさせるときに要介護者がすべってしまう。すべり落ちるのを何度も引き上げる介護者の負担も大きい。
「リクライニング車いすの場合、リクライニングさせた途中の角度は、よりすべり座りを助長して、座る対象者も介助者も負担が大きくなる」と述べている。