Lesson 11
「車いすから立ち上がって歩くと危険!ヒモやベルトで立ちあがれないように縛っておこう。」というのは間違った介護です。ではどうすればよいのでしょうか。


 まず、長時間座らせっきりの介護、座らせて放置しておく介護そのものが間違っています。寝たきりはよくない、といって、座らせっきりの介護現場があります。しかも、座ること=車いすに座らせておく、ととらえ、クッションなしの車いすに座らせておく生活を強いるのです。驚くことに、朝7時前から夕方7時まで、トイレに行く以外(おむつ交換以外)の12時間を座ってすごし、車いすに座ったままウトウトと眠っている人がいるのです。
 誰だって座った姿勢で長時間すごすのはつらいものです。座りっぱなしでは、お尻や腰が痛くなりますから、立ちたくなるのは当然です。立つ人には理由があります。立ち上がりたいから立つのです。長く座っていれば腰や膝を伸ばしたくなります。トイレへ行きたくて立つのかもしれません。別に、何か目的があって立ち上がるのかもしれません。何か嫌なことがあって場を離れたいのかもしれません。
 皆さん自身、同じ姿勢で講義を聞き続けることは苦痛でしょう。まして、座っている椅子が、座面がしっかりした椅子ではなく、単に布が張ってあるだけの車いすでクッションがないとしたら?ぜひ、やってみてください。そして、立ち上がりたい人を立たせないようにすることが間違っていることを体験的に学習してください。
 車いすから立ち上がる人に対しては、なぜ、立ち上がるのか、どうゆうときに立つのか、をよく観察して情報収集します。そして、個別の対応を考えます。もちろん、立ち上がる人のそばに介護職がいて見守る体制が必要です。介護職がいつも走り回っていてフロアに誰もいないのでは対応できません。
 加えて転倒防止のためにやるべきことがあります。@医師やリハビリ専門職による身体機能評価を依頼し、リハビリメニューを立ててもらい、リハビリを行う。A歩ける人が安全に歩けるように歩行器を使う(車いすに座らせることは歩く機会をうばうことになります)。B転倒時に備えて大腿骨頚部骨折を予防するプロテクターパンツをはく。Cベッドと歩行器(車いす)間の移乗時、より安全に移乗できるように、移乗介助バーをつける。Dどうしても車いすを移動のために使う必要があるのなら、お尻が痛くならないように、クッションを使う。折りたためるシートで作られている車いすは、座るいすとしての機能を有していない車いすも多いのです。E車いすは移動のときだけに使い、食事などはしっかりとした「椅子」に乗り移って座ってもらう。F車いすや椅子から立ち上がる人には、介護職が声をかけ、どうしたいのかを聞き、見守る。危ないときには手を出す。こんな介護をしたいものです。 。