Lesson 10
ベッド柵による拘束への対処


 ベッド柵は身体拘束実態調査で常に1・2位を争う実態があります。ベッドを柵で囲むことは身体拘束だとされています。しかし、ベッド柵がなぜ身体拘束なのか?柵は安全のためには必要なものなのに・・・という思いがある人も多いことでしょう。実は、現場を回っていると、ベッド柵というときの柵のレベルにはいろいろなものが混じっていて、次の@〜Bのようなベッド柵があるようです。そのどれを指して身体拘束というのか、どれが身体拘束でどれが拘束ではないベッド柵の使い方なのか、現場には混乱があるようです。筆者は、行動を制限するベッド柵や、本人が自分で解くことができないベッド柵は身体拘束だと考えています。しかし、自分の意思で就寝時に柵で囲むがその柵ははずそうとすればはずれるのであれば、拘束ではないと考えています。

 @ ある特別養護老人ホームを訪問したとき、倉庫に、その昔、その施設で使われていた"サークルベッド"がありました。柵で囲まれているベビーベッドのような、大人用のサークルベッドです。ベッドから出て別の場所へ行きたいという意思を示す人をサークルベッドに閉じ込めておくのなら、それは身体拘束です。

 A  常時、昼も夜も、本人が目覚めているときも、本人がベッドから出ないように4本柵でベッドを囲み、柵をはずせないように紐でくくりつけたり、柵の上からカバーをかけて柵がはずれないようにする場合もあります。
これは、本人が自分の意思で自由に柵をはずせるわけではないので、行動制限ですし、身体拘束です。ベッドへの乗り降りに関して転倒歴がある人については、いつ、どんな状況でどうやって転倒がおこったのかをふりかえり、今後起こりうる転倒の危険性について情報収集し、個別介護方法を考えるのが基本です。リハビリで筋力をつけることも重要です。加えて環境面の工夫もいろいろできます。
ベッドからの転倒リスクを減らす環境面の工夫
1.寝返りをして落ちるのなら、落ちないように安全な幅広ベッドにする。ー例えば敷布団とほぼ同じ幅100cmマットレスを使える幅広ベッドもあります。
2.ベッドから起きだすときに足元がふらついて危ないというのなら、就寝時には可能な限りベッド面を低くするように調節できる低床ベッドもあります。(床に近づけて低くしたり、本人が最も立ち上がりやすい高さにしたり、介護者に合わせて高くしたり、状況に応じて床面の高さを調整できるハイロー機能つき)ー例えばベッド床板面を25pまで低くできるベッドもあります。このような低床ベッドならベッドから転倒して骨折やケガの危険性を少なくできます。
3.もちろん、畳に布団で寝るのも一つの方法です。
4.万一転倒しても骨折しないようにベッドの周りの床面にマット等を敷く方法もあります。
5.より安全に降りられるように、移乗介助バーをつける。(さまざまなタイプの移乗介助バーがあります。)
6.センサーを使ってベッドから降りるとアラームが鳴るようにしておいて、ベッドから降りるときは必ず介護者が見守ったり手助けをする。(センサーもさまざまな商品が販売されています。)
7.転倒時に備えて大腿骨頚部骨折を予防するプロテクターパンツをはく。(プロテクターパンツも日本で販売されています。インターネットで検索してみましょう。)
8.歩行器など、歩行を安全に助ける福祉用具を使う。
9.夜間起きたときにまぶしいからと照明をつけないと転倒のリスクが高くなります。照明をつけなくてもぼんやりと明るいフットライトや、トイレに入ると照明が点灯するセンサースイッチなどで明るさを確保しましょう。
10.もちろん足元に電気コードや荷物があると、つまづきの原因になって危険です。安全に歩けるスペースを確保することが大切なことです。

 B  ベッドが狭くて就寝時にベッドから落ちないことを目的に、本人の意思で柵で囲むこともあります。本人がベッドから降りるときはベッド柵を下げる(はずす)ことが自由にできるという柵の使い方です。また、一部介助バーになっていて自由に降りられる開放スペースもあるが、残りを壁や柵で囲んでいる場合もあります。
これは身体拘束ではないと筆者は考えています。