Lesson 8
身体拘束は害、本人の安全を守らないことを知りましょう。


 身体拘束は本人の安全を守ると誤って信じられています。身体拘束の効果として言われることは、転倒を防ぎ、姿勢の保持に役立ち、医療をとどこおりなく行うことをすすめ、他の利用者が当該者から暴力をふるわれるのを防ぎ、本人の安全を守り安心感を与えるというものです。確かに、生命を守ることが優先される時、例えば、人工呼吸器をつけているのに、本人が意識混濁状態で呼吸器をはずしてしまう等、一時的に身体拘束をする状況があります。
 しかし、身体拘束には圧倒的な害があるのは事実であり、害について明確に知る必要があります。歩くと転倒の危険があるから歩かせないではなく、歩くことを奪うことによってその人は歩けなくなるのです。足の筋力が落ち、動かないからお腹がすかず、食欲が落ち、栄養状態が落ちたところに、長時間同じ姿勢で圧がかかると褥そうになり、心臓や肺の機能が落ちてきます。関節拘縮がおこり、いざ動かそうとすると痛むので、「何するの」と叫び手を振り回す。となると、「この人は暴力をふるうから困ったものだ。縛るしかない。」と悪循環になるのです。こうやって身体拘束はやめられなくなるのです。
 繰り返しますが、身体拘束は、転倒防止ではなく、ますます転倒のリスクを高めることになります。身体拘束された本人は、怒り、不快、抵抗、恐れを体感する。混乱はますます増し、抵抗する気力が薄れ、気持ちが落ち込んでいく。そして、動こうにも動けなくなり、寝たきりへ、そして吉岡のいう「抑制死」となるのです。