Lesson 6
集団処遇業務優先介護から尊厳ある個別介護へ。業務をこなすことが介護職の仕事ではない。まずその人に注目することからはじめましょう。


 身体拘束は、業務をこなすことに追われている介護現場ではなかなか減りません。起床、食事、水分補給、おやつ、夕食へ誘導、というように、時間に追われているとその業務をこなすことだけを考えるからです。一斉に手早くおむつ交換することはあっても、おむつ交換のときはそれだけをこなすのです。その人の尿意や便意を示すサインを読み取ってその人のリズムに合わせて誘導しようとすることや、臀部の皮膚をきちんと観察することは、集団処遇の介護を行っているとなかなかむつかしいものです。
 身体拘束をやめようとするときに一番基本となるのは、その人、に注目するということです。身体拘束は、尊厳ある個別介護と対極にあります。業務をこなすことが仕事だと考えている介護職だと、状況を観察して考えようとしません。そんな時間的な余裕がないし、どうやれば縛らないで介護できるか知識や技術がないままに工夫しようともしないのです。「衣類やシーツを何回も汚されるのはたまらないから、つなぎ服をきてもらおう」「暴れて困るから縛ろう」「歩き回るとどこに行くかわからない。ついて歩く余裕がないから座っておいてもらおう」「姿勢がくずれてくるのを防ぐためにはベルトが役立つ」という誤った現状や誤解がまかり通ってしまいます。
 身体拘束をなくすことは、施設長や介護職がそこで行われる介護のあるべき姿を自分の中にしっかり描くことにはじまります。それを実現するためには、利用者一人一人によりそい、業務をこなすのではなく、個別介護を行おうとすることにはじまります。それは当然縛らない介護と重なるのです。