Lesson 4
身体拘束の実態があります。


身体拘束の実態 1
◆ 全国老人福祉施設協議会の調査
  「特別養護老人ホームにおける行動制限に関するアンケート調査」
  (2001年12月実施。調査対象51施設、利用者合計4625人。
  最も多い拘束「ベッド全面柵」795人(17.2%)
  第2位「車いすベルト」440人(9.5%)
◆ 全国老人福祉施設協議会「第6回全国老人ホーム基礎調査」
  (2002年12月実施。調査対象2176施設)平成14年4月以降緊急やむをえない対応として、
  ベッド柵拘束を行っている1545施設(71.0%)、車いすベルト拘束を行っている1321施設(60.7%)

身体拘束の実態 2
◆ 特別養護老人ホームを良くする市民の会による訪問調査(2000年9月〜3月実施。413施設)
  「拘束をしている」と答えた施設は339施設(82%)、
  最も多かったのは、「車いすベルトなど」279施設(82%)、「ベッド柵を4本つけている」186施設(55%)
◆ 2001年度の調査(2年間継続のデータで比較できる施設数228施設)では、身体拘束をしている
  施設は85.5%と増加。身体拘束の種類では、「車いすベルトによる拘束」66%、「ベッド柵」52%。

 全国老人福祉施設協議会の調査「特別養護老人ホームにおける行動制限に関するアンケート調査」(「特別養護老人ホームにおける行動制限に関するアンケート集計(速報)」全国老人福祉施設協議会、福祉新聞2001年3月5日より引用抜粋)調査対象64施設中回収51施設、利用者合計4625人、2001年12月実施の調査、によれば、身体拘束の実態項目で最も多く行われていたのは「ベッド柵を4本、ベッドの四方に設置している(長尺の全面柵のサイドレールを両側に設置している場合も含む)」795人(17.2%)、次に多く行われているのは、車いすに抑制帯・ベルト・紐などで利用者を固定する身体拘束で、440人、この調査時点の調査対象施設入居者の9.5%が車いすにベルト等で縛られていることが示されている。(筆者が2つの調査項目を合算して計算。調査項目「車いすにY字型抑制帯で利用者を固定している」該当する対応がある332人+「車いすに腰ベルト・紐で利用者を固定している」該当する対応がある108人=440人/4625人=9.5%)続く身体拘束項目は、「ベッド柵を2本使用し、とりはずしができないよう固定する」197人(4.3%)、「向精神薬などで利用者の行動を制限している」187人(4%)、「利用者に介護衣(つなぎ)を着せる」156人(3.4%)「利用者の手にミトン型手袋をつける」95人( 2.1%)、「特定の部屋に利用者を入室させ、外部から鍵をかける」50人(1.1%)、「ベッドに紐などで利用者を固定している」30人(0.6%)、「車いすに車いす用テーブルで利用者を固定している」23人(0.5%)であった。

@ 老人福祉施設における身体拘束の実態を追跡してみると、全国老人福祉施設協議会「第6回全国老人ホーム基礎調査」 (2002年12月実施。調査対象2176施設)では、平成14年4月以降緊急やむをえない対応として、ベッド柵拘束を行っている1545施設(71.0%)、車いすベルト拘束を行っている1321施設(60.7%)という結果が見られた。

A 福岡県が県内特別養護老人ホームや老人保健施設など身体拘束禁止規定の対象となる7種類、計796施設の施設長を対象に調査 (「身体拘束―福岡県の800施設調査」厚生福祉、vol.4980,P7,2001年より引用抜粋) 2001年10月実施、回答率69%を行ったところ、施設の基本方針として「身体拘束を絶対に行わない」29%、「短時間でやむを得ない時に行う」62%の回答であった。実際に何らかの形で身体拘束をしていたのは319施設(58%)、施設種類別では、特別養護老人ホームの76%、老人保健施設の70%、指定介護療養型医療施設57%、の順であった。拘束の種類(複数回答)は、ベッドからの転落を防止する柵の設置が50%の施設で行われ、車いすからの転落や立ち上がりを防ぐY字型拘束帯も26%の施設が使用していた。なぜ、身体拘束を廃止できないのかという理由として(3項目選択)、「事故が発生した場合、家族からの苦情や損害賠償請求が心配だから」52%、「職員数が少ないから」48%、「事故防止のため家族が拘束を望んでいるから」46%などの回答がみられた。

  B 特別養護老人ホームを良くする市民の会による訪問調査(本間郁子「身体拘束の現状を知るー拘束しない介護のために」地域ケアリングvol.3,No.14,pp24-28,2001年より引用抜粋)2000年9月から3月実施、東京都、北海道、長野県、富山県、石川県、福井県、大阪府の8都道府県の414施設において各地の市民団体やNPO法人とネットワークをとり、2人1組で訪問による調査。この調査によると、調査が実施できた413施設のうち、「拘束をしている」と答えた施設は339施設(82%)であった。拘束の状態で最もおおかったのは、「車いすの抑制を行っている」279施設(82%)、「ベッド柵を4本つけている」186施設(55%)、「つなぎ服の使用168施設」(50%)、「施錠する部屋がある」103施設(30%)であった。(%は身体拘束をしている施設339施設を100としての比率)調査を実施した本間郁子は、「調査表を一つ一つ見てみると、拘束をしていないに丸をつけながら、つなぎ服を3名、車いすの拘束を7名というよう数字を書き入れている施設もあり、電話で確認すると、「わたしたちはこれを拘束と思っていません。安全のためだと思っています。」という返事が返ってきた。また、88%が家族の同意を得ているという結果が出ているが、家族の意見を聞くと「施設から説明はあったけれど、人手がないため、特に夜間は介護の手が足らず危険であり、転倒してケガや入院になっても責任は取れませんがそれでも良いですか?と言われると、拘束しないでほしいとはなかなか言えない」と同意せざるを得ない半強制的な同意の場合もあるようだ。」と述べている。

実態調査から読み取れること
上記の実態調査が示しているように、身体拘束禁止規定があるにもかかわらず、福祉施設では、「ベッド柵の4本使用」「車いすベルト」「つなぎ服」がまだ使われています。加えて言えば、身体拘束禁止規定を知ってはいるものの、「身体拘束ではない、安全のために必要」「損害賠償責任を問われると困るからしかたがない」「職員が足りない現状では無理」といい、身体拘束禁止規定を「いろいろ協議し、家族も同意すれば、やむを得ない場合には身体拘束を行ってもよいという規定」として解釈している現場もあります。
禁止規定によって安易な拘束―「なんとなくこれまで縛ってきた」ということや、「おむついじりをして困るのでつなぎ服を持ってきてください」ということは減ったことでしょう。しかし、やむを得ない場合、というのを逃げ道に使ってはなりません。確かに、一時的に、生命を守ることが優先される時期にどうしても必要な拘束があるかもしれないが、やむを得ない理由、縛る理由を探し、なぜ拘束をするのかを理屈づけできれば身体拘束OK、と考えていては、いつまでも現状は変わりません。縛らないでどう介護するかを考え、試みること。何も考えず、真剣に試みずに「しかたないわね。」と縛るのは絶対にいけません。