Lesson 2
こんな状況だったら縛りますか?どうしますか?事例について考えましょう。
他の人にもこの設問に答えてもらい、グループで意見交換してみるとよいでしょう。

事例
「ジョンソン氏78歳 アルツハイマー型痴呆 ナーシングホーム入居。 痴呆はあるがコミュニケーションは可能。尿失禁有り。日中はデイルームの椅子に座ってすごす。歩行力が低下し介助が必要。ここ数ヶ月の間に何回も転倒したことがあり、転倒防止のために椅子に座っている間はベルトによる拘束をしている。」 さあ、想像してみてください。今、あなたはジョンソンさんの起床時ケアを終了し、ベッドから椅子に介助して座らせ、いつものように、ウエストのあたりをベルトで固定しました。立ち去ろうとしたそのとき、ジョンソンさんが「やめてくれ。こんなベルトしたくない。はずしてくれ。お願いだ」と言いました。

30人の看護職中9人がベルトをはずすと答えた。
21人がベルトをしたままにすると答えた。
ベルトをはずすと答えた9人中7人がベルトをすると判断を変えた。
・2人だけが判断を変えなかった。
・ この状況が夜間帯などにおこり、スタッフがほんの少ししかいなかったら・・・6人がベルトをする。
・ この利用者が元気な頃「転倒を防ぐのが看護職の仕事だろ」と言っていたとしたら・・・3人がベルトをする。
・ 医師によってベルトをすることが指示されていたら・・・2人がベルトをする。
・ 家族が身体拘束することを希望していたとしたら・・・1人がベルトをする
・ 国が施設での身体拘束OKとしていたら・・・0人
ベルトをしたままにしておくと答えた21人中全員が考えを変え、ベルトをはずすと答えた。
・ 施設では身体拘束をすることは国が禁じられているとしたら・・17人がベルトをはずす。
・ この状況がスタッフが大勢いる日勤帯に起こったら・・・16人がベルトをはずす。
・ 医師の身体拘束OKの指示がなかったら・・10人がベルトをはずす。
・ 家族が拘束はしないでくださいと言っていたら・・・7人がベルトをはずす。
・ 本人が元気なころ「身体拘束なんてまっぴら」と言っていたのを知っていたとした・・・5人がベルトをはずす。
考察
身体拘束すべきかどうかの判断は状況によって変わる。利用者が痴呆で自分で判断ができない人に変わって看護職は何がその人にとって一番よいのかを考える。拘束するかどうか、スタッフが十分にいるかどうか職員体制によっても左右される。身体拘束をしてまでも安全を守るべきかどうか、看護職はジレンマに悩む。身体拘束をするかどうかは。倫理的な葛藤、ジレンマの源、どう仕事すべきかモラルが問われる問題である。