東洋大学　渡辺裕美     １．夜勤介護従事者は夜勤専従 日本では、介護従事者はどの時間帯にも働く。日勤、準夜、深夜、早番、遅番、など勤務時間をローテーションでまわす。だから、昼間働きたい人は、通所介護を勤務先とし、特別養護老人ホームや、認知症グループホームなど居住型施設に勤務することは、時に夜勤で働くことが条件となる。夜勤専従の介護従事者を雇用している居住施設もあるが、その数は少ない。一方、デンマーク・ネストベッツでは、夜勤は夜勤者が行い、日勤者が夜勤をローテーションで行うことはない。準夜は準夜職員で担う。深夜は深夜の職員で担う。契約した勤務時間帯の中で勤務をまわしていく。   ２．法定労働時間を優遇 デンマークの法定労働時間は、週３７時間と定められている。よって、朝７時からの日勤帯の常勤者は週３７時間労働で勤務表を組む。１５時以降の準夜帯と２３時以降の深夜帯は週２８時間労働で勤務表を組む。昼間働く人に比べて夜働く人の労働時間は短くしてあり、夜勤者の労働条件を優遇している。   ３．訪問ルートを決めて２人担当制 東（Ｏｓｔ）地区の準夜帯チームは１１人。１１人で毎日の勤務を回している。ではどように勤務が組まれているのだろうか。ちょうど私たちが同行訪問した２００７年２月２２日は、１１人中５人が休み、６人が働いていた。 準夜は、６つの訪問ルートが組まれ、それぞれを各２人のヘルパーが担当している。例えば、ルート９は、ヘルパーＡとヘルパーＢの２人が担当している。ヘルパーＡが休む時は、ヘルパーＢが出勤である。どちらかが勤務となる。それぞれのヘルパーにとっても、訪問ルートが固定担当制はメリットが大きい。次にどこの家に行くのか道に迷うことも少ないし、鍵も間違わない。どの人がどのような状況でどのようなニーズがあるのかを頭に入れているので、訪問介護を行う上でとまどいがなくなる。利用者にとってもヘルパーと顔見知りなので安心する。   ４．夜勤連続勤務 ２年前までは、７日を単位として夜勤勤務をしていたとのこと。７日夜勤を行い、７日休む。このように１週間ごとに、働く週と、休む週で勤務を組んでいた。　現在は、５日を単位として夜勤勤務を組むように変わってきた。例えばヘルパーAの場合、（２勤２休）、５勤５休。ヘルパーC、F、G、Jの場合、（２休２勤）、３休２勤、２休３勤。   ５．夜勤者の給料 実際に働いているヘルパーに聞いた、おおよその金額ではあるが、日勤よりも夜勤者の給料は高い。日勤の介護従事者の１カ月の手取り額は、約１００００ＤＫＲ（日本円に換算すると約２２万円、１デンマーククローネ＝２２円として計算）。夜勤の介護従事者の手取り額は、１２０００～１４０００ＤＫＲ（日本円に換算すると約２６万４０００円～３０万８００円、１デンマーククローネ＝２２円として計算）。   ６．夜勤で働いている人の実像 なぜ夜勤で働いているのか、を働いている人にたずねた。 Ｈｅｌｌｅ「なぜって？どう答えようかしら。夫も工場で夜勤で働いているの。息子も２２歳になって手がかからないし、だから私も夜、働いている」とのこと。 Ｌｉｓａ「深夜勤務として働き始めて１２年。この仕事が好き。昼間のスタッフよりも夜働く人の数は少ないので静か。介護スタッフが集まってペチャクチャおしゃべりするのはうるさくて苦手。働く仲間の人数が少ないのでストレスも少ない。一人でやる仕事が多いのも気に入っている」と。 Ｖｉｎｉ「深夜の仕事が好き、別のコミューンでも５年夜働き、ネストべでも５年。深夜の仕事をはじめて１０年になる。なぜ夜に働くのかって？それは私が夜型人間だから。別の理由は、私は入浴介助をしたり体を使う仕事よりも、自分で考え思考する仕事が好き。夜勤で出会う人は重度ケアを要する人が多く、看護師マーチンを呼ぶことも多い。私の判断でどうするかを決めることになる。そんな夜勤の仕事が好きなの。」 　筆者が「夜働くと、働く時間が少ない（週２８時間でよい）し、昼よりも給与が高いとなると、夜働きたいという人が多いのでは？」と問うと、「いいえ、夜働くことを希望する人はいないわ。昼間眠れる人は少ないし、病気になったり大変だから」という答えだった。   ７．介護従事者の派遣会社 「SOS　WORKER」という介護従事者派遣会社があるという。そこに登録しておくと、時に仕事が舞い込んでくるのだという。看護師やヘルパーが急に休んでしまい手配が間に合わなかったときに、コミューンが派遣会社に連絡し、代わりの人の派遣を依頼するのだ。コミューンは派遣会社にかなりの額を支払うので、派遣会社で働く人の給料はかなり高い。一例をあげる。 看護師　月―金　３００DKR／時間あたり（日本円に換算すると、時給６６００円） 　　　　週末　　４００DKR／時間あたり（日本円に換算すると、時給８８００円） ヘルパーの時給は聞けなかった。ネストベッツの職員として働いている夜勤従事者は、先に述べたように、２日、３日の夜勤明けの休みがある。夜勤明けのときに、派遣会社の職員として、他地区の夜勤者として働くこともあるということだった。プラスの収入になるし、知らない地区で新しい仲間と出会ったり、新しいことを知る機会になって刺激にもなると言っていた。